Mares(2004)

KNさんお奨めの下記の論文を読む。

Mares, Isabela. 2004. "Wage Bargaining in the Presence of Social Services and Transfers," World Politics 57, pp.99-142.

内容:賃金交渉のレベルと失業率の関係は、比較政治経済学においてこれまで様々な形で論じられてきた。なかでも、Calmfors & Driffill はOlsonの集合行為論を援用して、賃金交渉の集権度と失業率の関係がハンプ型になることをフォーマルモデルで示した。これに対して、Hall, Franzese, Iversen, Soskiceといった論者は賃金交渉のアクターと金融当局との戦略的相互作用といった変数をモデルに加えることで、異なる結論を引き出してきた。しかし、これらの研究は国家間の共時的な違いを上手く説明するものの、オイルショック以降の失業率の一貫した上昇という通時的な違いを説明できないという実証的な課題を抱えている。そこで本稿は賃金交渉の集権度、金融当局の融和度(インフレに対して厳格か否か)、に賃上げ抑制の見返りとして与えられるはずの社会保障政策に対する労働組合の選好という変数を加えることにより、共時的および通時的な違いを説明することを狙っている。
理論としては、高度に分権的か集権的な賃金交渉システムでは失業率が低くなり、中間的なセクターレベルの集権度の国では失業率が高くなるというハンプ型のモデルが第一次接近として想定されているが、そこに金融当局の融和度が失業率に影響し、租税負担の上昇と労働市場アウトサイダーへの社会サービスの増加が賃上げ抑制と労働需要の増加のリンクを弱める*1ため失業率を上げるという想定が追加されている。議論の過程では緻密なフォーマルモデルが示され、1960年から95年までのOECD14カ国のデータによる実証分析はモデルの妥当性を示している。

感想:計量の結果は読めるし、綺麗な理論が展開されているなーとは思うのですが、フォーマルセオリーが分かりません。途中までは数式を読めたものの、付録への参照が増えたところで挫折。付録に至っては読む気もおきませんでした。
ミクロ経済学マクロ経済学をいつか真剣にやらなければいけないようです。問題はいつやるかなのですが・・・。
とりあえず、Maresの近刊に期待。

Taxation, Wage Bargaining, and Unemployment (Cambridge Studies in Comparative Politics)

Taxation, Wage Bargaining, and Unemployment (Cambridge Studies in Comparative Politics)

*1:税負担・社会保険料負担が重いと可処分所得の割合が低くなるので、税負担が低い場合に比べて賃上げ抑制が労働需要に結びつかないうえ、アウトサイダーへの社会サービスが多いと賃上げ抑制の見返りのはずの社会政策が組合員に返ってこない。