Gruber(2000)

Ruling the World: Power Politics and the Rise of Supranational Institutions

Ruling the World: Power Politics and the Rise of Supranational Institutions

[要約]
これまでの国際関係論は、コヘインを中心としたネオリベラル制度論にしろ、それを批判するネオリアリズムにしろ、国際レジームが集合行為問題を解決し、ポジティムサムの状況をつくりだすことを暗黙の前提としていた。しかし、実際の国際制度は利益を得る勝者と(相対値ではなく)純損失を被る敗者を生み出すこともある。では、損失を被るはずの敗者がアナーキーな国際システム下でなぜ国際レジームへの参加を競うように求めるのか。それは、勝者側が制度の創設によって現状維持点の利得状況を変え、レジームへの参加を敗者にとって「よりまし」な状況に変えるからである。つまり、これまでの国際関係論はダールの意味での権力しか問題にしなかったが、勝者側が非決定権力を行使する状況を考慮する必要がある。 
 以上のモデルをNAFTAと欧州通貨共同体の事例で検証。
[論点]

  • 著者のモデルの適用可能範囲が不明。「そういう場合もあるかもね」とは思うけど、なんか無理くりモデルを作り上げた感じが否めない。よく使われる「囚人のジレンマ」の場合には、背後に「自由貿易パレート最適なのに集合行為問題がそれを妨げる」というきちんとした経済理論があると思うのだけど、この本のモデルにはバックボーンとなる理論が薄い。