Barbara Geddes (2003) Paradigms and Sand Castles

Paradigms and Sand Castles: Theory Building and Research Design in Comparative Politics (Analytical Perspectives On Politics)

Paradigms and Sand Castles: Theory Building and Research Design in Comparative Politics (Analytical Perspectives On Politics)

リサーチデザインの参考にと読んでみる。
[問題設定]比較政治学は検証に耐えうる理論をこれまで構築してこなかった。では、どうすればよいのか。
[アドヴァイス]

  • 研究対象の選び方:知的好奇心、憤り、情熱が教えるところに従うこと。
  • 問題設定の仕方:革命、民主化、経済発展などの「大問題」は、いくつかのプロセスに分解して、観察可能な含意がひきだせる形に理論化する。
  • ケース選択の仕方:従属変数の値が一定となるようなケース選択をしない。ケースを増やす。
  • ケーススタディによる理論の検証の仕方:①選択したケースが理論の適用されるドメインを反映していること、②理論を導き出したケースと理論を検証するためのケースが異なっていること。

[感想]

  • KKVとかなりかぶっているが、Geddes の専門である民主化論の研究を使って具体的に理論を検証する方法を説明する部分は分かりやすく、ためになる。
  • 第五章の合理的選択論に対するありがちな誤解を一つ一つ解いていく部分は素晴らしい。理論構築に合理的選択論を使うか否かは別にしても、知っていて損はなし。
  • 理論を引き出したケースと理論を検証するためのケースは別でなければいけないという文脈で、Lipset & Rokkan のヨーロッパ政党制の「凍結」の理論をラテンアメリカのケースを使って反証しているが、Lipset & Rokkanはヨーロッパの政党制を「理解」しようとしたのであって、ヨーロッパの文脈を離れて理論が適用可能かどうかというのは彼らの問題意識にはないという批判が可能であろう。比較政治学の目的が、一般化可能な理論を構築することにあるのか、それぞれの社会を「理解」することにあるのか、という論争に結局もどってしまうのだろうか。