一応読了

thieda2005-08-10

Craft of Political Research, The (6th Edition)

Craft of Political Research, The (6th Edition)

今月から始まる秋セメスターの "Introduction to Professional Political Science" の授業で使う教科書の一つ。統計学の基礎が平易に解説されているので "Political Science Data Analysis" の導入として早めに読んでおいたほうが良いとのお達しが学部から来ていたから読んでみました。確かに、回帰分析、相関係数、ロジット分析、プロビット分析、仮説検定の考え方が極めて平易に書かれていて、良書です(これだけで計量分析の応用に入ることはできないけれど)。

しかし、それ以上に、実証政治学とはどのような学問で何を目指すのかということが一歩一歩丁寧に説明されていて、アメリ政治学の主流の考え方を理解するのに役立ちました。つまり、政治学研究の目的は世界を説明する理論(theory)を提示することにあるということです。そして、"The purpose of a theory is to provide a simplified pattern to describe a complicated jumble of observations"(p.164)ということ。

それにしても、KKV Designing Social Inquiry: Scientific Inference in Qualitative Research 社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論 を読んだときも感じたけれど、こういう研究設計の教科書を読むと質的研究ではここで提唱されるルールに従った「妥当な結論を得られる研究設計」をするのは難しいなと改めて思います。拙稿なんか、従属変数に従ってケースを選択した例といわれても仕方がないし、ケースは二つしかないし、・・・。まあ、Rethinking Social Inquiry: Diverse Tools, Shared Standardsを読むと少し救われた気になりますが。

本書はビギナー向けの教科書なので、研究設計の教科書としてはKKVのほうが勉強になるかな。