Rueschemeyer, Stephens, and Stephens (1992)

Capitalist Development and Democracy

Capitalist Development and Democracy

[問題設定]民主化研究では、計量研究が資本主義経済の発展と民主化との間に正の相関を認める研究を蓄積してきた一方、オンドンネルやリンスなど事例志向の比較歴史分析が後発資本主義国における経済発展と民主化との逆の相関を強調する傾向があった。どちらが正しいか?
[議論]Nの大きな計量研究が明らかにした経済発展と民主化との正の相関は否定することはできない。しかし、計量研究はその間の因果メカニズムをブラックボックスにする傾向にある。では、Nを増やした比較歴史分析ではどのような関係を見出すことができるか。
理論的枠組みとしては、階級間の権力関係、国家の社会からの自律性、そして国際関係のなかの位置となる。先進資本主義諸国、南米、中米、カリブ海諸国の事例研究が示すのは、経済発展と民主化との間には確かに関係があるが、それは近代化論が考えるような教育の向上による民主主義的価値の普及といった文化論的なものではない。資本主義経済は民主主義の前提条件だが、それは資本主義経済が民主主義に否定的となる地主階級の勢力を弱め、民主主義に親和的な労働者階級を生み出すがゆえなのである。ブルジョワ階級が民主主義を選好するか否かは状況依存的である。つまり、資本主義経済発展が階級間の権力関係を民主主義の発展に有利なように変えるがゆえに、経済発展と民主主義との間には正の関係が見出せるのである。ただし、そのメカニズムは国家の自律性の影響や国際関係における位置づけといった要素との結びつき方次第であり、歴史的背景や地域ごとに異なるものとなる。