International Workshop: "Do Institutions Evolve?"

最近、EUIでの僕の師匠は「進化論」に凝っていて、その政治学への応用をかなり真剣に提唱しています。学生たちにもかなり「進化論」の枠組みの利用を推奨しているようで、先学期は植物学、進化経済学社会学、進化ゲーム論などの文献を読むかなりマニアックなセミナーを開いていたぐらいです。門下生の中にもちらほら博論で「進化論」の枠組みを使う学生がいるようですが、僕自身はそこまでお追従する気はなく、先生が「進化論」の話を熱くする時は「東洋の微笑み」を湛えて生暖かく見守っているところです。
しかし、師匠の「進化論」への情熱が功を奏したのか、EUIの Robert Schuman Center がかなりお金を出してくれたらしく、アメリカやイギリスから有名な研究者を招いて「進化論の社会科学への応用」を考える国際セミナーが開かれました。全然聞かされていなかったのですが、キャスリーン・セーレン、マーク・ブライス、エレン・インマーガット、エレノア・オストロム、といった有名どころがたくさんくるということで、野次馬根性から参加してきました。事前にペーパーを渡されていなかったのであまり議論についていけていませんでしたが、結局のところ問題は何が「進化」で、何が「制度」なのかという定義の問題に突き当たるということのようです。討論者としてセーレン教授が指摘いましたが、「進化」の枠組みがどれほどの付加価値を既存の歴史的制度論に与えるのか不明です。「進化 (Evolution)」が単なる「変化(Change)」の比喩に留まるならば、「全ては変化している」という当たり前のことを「進化」という言葉に置き換えたに過ぎず、「進化論」を使う意味はあまりありません。一方、「進化論」を額面通り受け入れると、例えば選挙制度といった政治制度のどこが「変異、選択、淘汰」を経るのか不明です。政治の世界ではある制度がある選択を自発的・非自発的に「強制」するのが肝で、植物学の世界とは違うからです。おそらく、異なる制度がある「変異」を優遇し、違う「変異」を冷遇することで、社会経済環境の変化から生じるエージェントの行動の変化の違いを説明することができるでしょうが、その場合は「制度が進化する」とは違う話でしょう。「制度」は変わっていないので。結局、議論も堂々巡りであまり生産的な試みには思えませんでした。

ステファーノ・バルトリーニ教授(左)とキャシー・セーレン教授(右)

ドイツから来たエレン・インマーガット教授

ジョンズ・ホプキンスのマーク・ブライス教授