もう三本

"(500) Days of Summer"
http://movies.foxjapan.com/500daysofsummer/

 11月に一時帰国した際の日本行きの飛行機の中で見た映画で、面白かったのに途中で着陸態勢に入ってしまい結末を見逃してしまっていたので、改めて観てみました。日本では最近公開されたとか。
 ズーイー・デシャネルは前々からキュートだと思っていましたが、ちょっと醒めた感じで、でも天真爛漫なヒロインを好演。でも、映画の核は主演したジョセフ・ゴードン=レヴィットでしょう。恋の絶頂とどん底の感情の起伏を豊かに表現していて、おそらく「草食系」の男性諸氏は誰もが感情移入できるはず(しかし、世の中にそんなに「肉食」な人っているのか?)。編集も良く、物語の時系列をわざとばらしてつないでおり、最後までダレずに見ることができます。
 映画の構造が恐らくヒットの原因だと思うのですが、これまでの典型的なラブコメでは、誰か「良い男」がいて、主人公の女の子が友人達と彼の気持ちを深読みしてあーでもない、こーでもない言い合ううちに、彼を好きになって、嫌いになって、最後にハッピーエンドで結ばれるという「型」がありました。この映画は意図的にその「型」を逆転させ、「良い女」を登場させ、主人公の男の子が友人達に支えられながらヒロインとの関係の中で感情を起伏させ、エンディングにつながります。映画の焦点は男性の内面に当てられるわけです。そして、この映画の主たる観衆層であろう世の女性は、ヒロインではなく、主人公に(憧れるのではなく)自分を投射して感情移入するでしょう。女の子がヒロインに感情移入、男の子がヒーローに感情移入、というパターンをわざと交差させたところがこの映画の面白みです。

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対して、駄作だったのが『(原題"My Sister's Keeper")』。「すわっ、キャメロンディアスが坊主に!?」と一時騒がれたらしいですが、キャメロン・ディアスが三児の母親役。物語はというと、白血病の長女のドナーとして、受精卵を選ばれてそのために生まれてきた次女が、長じて長女が腎臓の移植が必要となったときに移植を拒んで両親を提訴するというところが話が展開します。まず、キャメロンが母親かつ実は弁護士で、自分の弁護のために法廷に出るとか、長女のボーイフレンドが・・・とか、次女の担当弁護人が実は・・・とか、物語をドラマチックにするための設定がご都合主義すぎて鼻につく。確かに、次女役のアビゲイルリトル・ミス・サンシャイン)は上手いし、長女役も熱演しているけれど、泣かせようとすればするほど白々しくなっていきます。言い換えると、「ベタすぎる」の一言。

最後に、鬼才 David O. Russell 監督の "Flirting with Disaster"。主演は売れっ子になる直前のベン・スティラーで、出生直後に養子に出され養父母に育てられた主人公が、養子縁組組織の美人エージェント、妻、幼児とともに生みの親に会いに行くというドタバタロードムービーベン・スティラーって、どうしてこうも壊れかけた周りの人間に振り回される役が似合うんでしょうか。笑えますが、最後に主人公が「自分のアイデンティティ」問題に自分なりの解答を出すところが、すっきりして良いです。