健康食品

thieda2005-10-07

朝日新聞社会面(2005年10月07日web版)「アガリクス本監修の名誉教授ら2人を書類送検 警視庁」
http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY200510070137.html

コロラドにいても今はネットで日本の新聞を読めるので便利です。もちろん、アメリカの新聞・ラジオもネットでいけます*1。注目したのは健康食品詐欺事件のニュースです。
最初に持った感想は、「わざわざ嘘をついて捕まる危険を冒さなくても、合法的に騙せるのに」というもの。つまり、初歩的な統計の知識があれば、嘘をつかずに十分情報操作が可能だということです。
例えば、通常の治療を受けている末期ガン患者の五年後生存率を仮に20%とし、100人の患者にアガリスクを与えれば、平均して20人が「治る」わけです。そして、その20人から体験談を語ってもらえば嘘をつかずに薬効を広告できます。
もちろん、ここには「治った」患者だけから体験談を聞くという誤った数字の操作があるわけで、「治った」20人にアガリスクが効いたかどうかは、アガリスクを与えた患者群と与えなかった患者群とで治癒率を比較しなければ、何も薬効について推論できません。もし、与えた患者群の治癒率が20%で与えなかった患者群の治癒率が20%ならば、「体質によって効く人もいれば効かない人もいる」のではなく、アガリスクはガンに何の影響も与えていないと結論するのが妥当でしょう。このような統計のトリック(セレクション・バイアス)は恐らく多くの健康食品業者が行っていることでしょう(織り込みチラシによくある体験談集など)。
僕の実家にも怪しげな健康食品がゴロゴロころがってますが、逆に言うと、本当に初歩的な統計学の知識*2が広く普及していれば、これほど健康食品産業が利益を貪ることもないのではないでしょうか。
こんなことを統計の授業を受けながら今日は考えていたのでした。

*1:N.Y.Times, NPRがお気に入りです

*2:ここで使ったのはCrossTab(分割表)。