ジョブ・トーク

thieda2006-02-26

CUの政治学部は、来年度からの国際関係論(安全保障)のアシスタント・プロフェッサーを探しています。そして、先週二回、そのポストのためのジョブ・トークがありました。一人はPaul Fritzという、主要国間戦争における戦後処理を研究しているひとで、もうひとりはAysegul Aydin という国内制度や経済利害と紛争への第三国の干渉を研究している人でした。
Paul Fritzさんの研究は、戦後処理は戦勝国が敗戦国に対して融和的であるほうが戦後の国際関係は安定するという通説に対し、むしろ敗戦国に対し厳格な措置をとったほうが安定するという論を1815年から現在までの主要国間戦争のケーススタディから明らかにしようとしたものでした。しかし、どうも議論が弱く、教授陣・院生の反応はいまひとつといったところ。
これに対し、Aysegul Aydinさんの研究は、紛争の影響をうける企業あるいはセクターレベルの利害がどのように干渉政策に影響するかという国内→国際の連関を計量分析でさぐったもので、オルソンの集合行為論にもとづいて国内政権の勝利者連合(Winning Coalition)のサイズが大きければ大きいほど干渉しにくくなるというものです。ただ、彼女の勝利者連合という変数は、操作化するとほとんど民主主義度と一緒になってしまうという問題があって、かなり突っ込まれていました。
二人のプレゼンテーションを比べてみて感じたのは、アメリカの政治学部の採用では計量のほうが有利なのかなという点です。というのも、おそらくPaul Fritzさんの研究のよさは理論の斬新さというよりも19世紀、20世紀の戦後処理を詳しく調べたケーススタディにあると思うのですが、短い時間のプレゼンテーションでは十分にはそのよさを展開できません。これに対し、Aysegul Aydinさんの実証研究は回帰分析の表を一枚パワーポイントで見せれば一目瞭然なので、プレゼンテーションの効果としては計量がケーススタディを圧倒してしまうのかなと。まだ、ふたりとも博士論文が出来上がっているわけではないので、全体を読むことはできませんから。
とりあえず、IRセミナーを取っているクラスメイトのほとんどはAydinさんを支持していました。