Mechanism Design

thieda2008-09-25

2007年ノーベル経済学賞受賞者のEric S. Maskin教授が講演にいらしたので、聴きにいってきました。ここのポスドク・プログラムである Max Weber Program は結構、著名な研究者を呼ぶのですが、今回はさすがにノーベル賞受賞者ということで部屋一杯に人が集まっていました。
さて、講演の内容はというと、具体的な例を用いて経済学において近年、隆盛となっている(らしい)「メカニズム・デザイン」とは何かを説明するというものでした。端的にいうと、ゲーム理論などのフォーマルな手法を用いてある目的を達成するためのメカニズムのあり方を探るというもの(らしい)です。一番簡単な例を紹介すると、太郎と花子という兄弟を持つお母さんがいて、二人に一つのケーキを食べさせたいとします。ここでは二人の満足を最大化することが目的となります。一見、お母さんはケーキをちょうど二等分に切って、二人に食べさせれば良いように思えます。しかしながら、お母さんから見た「半分」と太郎(もしくは花子)から見た「半分」が一致するとは限りません。太郎は「自分のほうが小さい」と駄々をこねるかもしれません。さて、どうすればよいか?この問題を解決する一つのメカニズムは「太郎にケーキを半分に切らせ、花子に選択させる」というもの。花子が切り分けられたケーキを選ぶので、太郎は丁度等分となるようにケーキを切り分けるインセンティブを持ちます。しかも、花子はいつでも大きい方を選択できるので、不満は生じません。こうして兄弟喧嘩は避けることができるというわけです。
理論の発展状況はもっと抽象的で一般化可能性を問うものだそうですが、こうした政策目的を達成するメカニズムを設計するという研究は、例えば、温暖化ガスの排出権取引とか携帯電話向け電波割り当てといった領域で応用が可能です。しかも、メカニズム・デザインをする政策決定者が公共の利益にかなうように振舞うメカニズムを設計するというメタのレベルに行くと、政治制度のデザインの話にもなります。将来、「政治工学」として政治学の世界にも導入されるかもしれません。