ワークショップ二日目

ワークショップ「現代福祉国家の進化」二日目。9時から開始ということで、朝早くにバス停でバスを待っているとパトリシアとばったり。春につきものの天候の変化のせいか、冷え込んだうえに強風だったので、二人で震えながらバスを待ったのでした。同期の二年生達は来週に博論中間発表会を控えているため忙しそうです。こちらは編入のため5月末に博論2/3提出ですが、何でも締め切りが遅いのは良いことです(?)。
午前中は移民介護労働者比較のフランカ先生、東欧の子育て支援施策比較のドロタ、そして僕というラインナップ。やはりプレゼンテーションというのは大事なもので、ドロタはヨーロッパ社会政策学会博士課程院生奨励賞を受賞しているほど優秀な研究者なのですが、短時間のプレゼンで理解できる形に議論を単純化できていなかったので、フランカや僕の報告のほうが受けが良かったようでした。自分のプレゼンでは合理的選択制度論系の仮説の提示と計量分析による結果の報告という抽象度のやや高い内容でしたが、Q&Aでヨーロッパ各国の事例での理論の適用可能性でかなり具体的な話をできたのが良かったようでした。アネクドートはどこに行っても大事です。
午後は福祉国家の再分配効果を研究しているミーアと社会サービスが所得再分配に果たす役割を研究しているマリアの報告。ミーアは僕と同じ三年生で、5月末までに博士論文をかなり書き進めなければいけないのですが、去年の発表からほとんど進展がないような・・・。批判されるのを覚悟で何らかの因果メカニズムの議論を展開するリスクを犯さないと話は進まないということです。一方、マリアは二年生なものの上手なプレゼンだったうえ、とにかく誰もが納得の重要な研究テーマなので議論も盛り上がりました。ルクセンブルグ所得調査など、マイクロレベルのデータでもせいぜい現金給付や所得税を相殺したネットの可処分所得で再分配後ジニ係数などの議論をするわけですが、社会保障支出の大部分が移転支出で再分配される場合と、北欧のように無料の医療制度や低価格の公的保育などのサービスの形で再分配される場合の違いを取り込むことができていません。彼女の研究はそれをやろうということで、非常に面白いです。しかし、どうやって社会サービス給付の価値を測るかなど、実際にやるとなるとかなり難しそうです。
最後に皆で「福祉国家研究の将来」というディスカッションをやって散会でした。ジェーン・ギングリッチ教授が「もう例外的事例であるスウェーデン研究の時代ではないし、ポール・ピアソンの時代でもない」と言っていましたが、かなり同意です。さらにピアソンの経路依存性論に対抗して出されたセーレン&ストリークの「漸進的かつ刷新的変化」も対抗仮説の没落とともに沈むのではと言っておきました。「世の中は常に変化している」と言われても当たり前ですよね。